中小企業の、自然災害への事前対策を税制面で支援する制度が「中小企業防災・減災投資促進税制」です。近年、企業はさまざまな災害リスクに直面しており、事業を守るためには事前の備えが不可欠です。
今回は、この制度について詳しく解説します。中小企業防災・減災投資促進税制は、中小企業に自然災害への事前対策の取り組みを促進させることを目的に、平成31年度税制改正で創設されました。
この制度は、青色申告書を提出する中小企業者等のうち、令和9年3月31日までに事業継続力強化計画や連携事業継続力強化計画(※)の認定を受けた中小企業者が、認定を受けた日以後1年を経過する日までに計画に記載された対象設備を取得・事業供用した場合には、特別償却の措置を受けることができる制度です。
特別償却の償却率は、令和7年3月31日までに取得・事業供用した資産については18%でしたが、令和7年4月1日以後に取得・事業供用したものについては16%に引き下げられました。
※ 事業継続力強化計画とは、中小企業が自社の災害リスク等を認識し、防災・減災対策の第一歩として取り組むために、必要な項目を盛り込んだもので、現在及び将来的に行う災害対策などを記載するものです。また、連携事業継続力強化計画は、これを複数の事業者で策定するものです。
中小企業防災・減災投資促進税制の対象となる設備は【下表】に該当するもののうち、計画の認定を受ける際に目標の達成及び内容の実現に資するものであることの確認を受けた設備です。
ただし、消防法や建築基準法に設置が義務づけられている資産や中古資産、所有権移転外リースによる貸付資産は、この制度を適用することができません。また設備の取得等に充てるために国や地方公共団体から補助金等の交付を受けて取得等する設備も対象外になります。
対象設備については度々見直しが行われており、令和5年度税制改正で耐震設備が対象に追加されましたが、令和7年度税制改正では、これまで対象であった感染症対策のために取得等をするサーモグラフィ装置は対象外とされています。
中小企業防災・減災投資促進税制を受けるためには、まず事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画を作成し、認定の申請をします。経済産業大臣の認定を受けた後1年以内に、対象となる設備を取得・事業供用します。
そして、取得・事業供用した事業年度の確定申告で、制度の適用を受ける旨の申告を行います。確定申告書には、償却限度額の計算明細書を添付します。
集中豪雨や河川の氾濫といった水害や地震など、中小企業を取り巻くリスクは、近年増加しています。
雨が多い日本では、毎年のように全国のどこかで大雨による河川の氾濫など水害が発生しています。平成23年から令和2年までの10年間に全国の約97%の市区町村で水害が発生し、10年間で10回以上の水害が発生している市区町村は57.7%もあります。【下図参照】
中小企業強靭化研究会が平成31年に取りまとめた報告によると、BCP(事業継続計画)や事前対策を行っていた企業は、災害が発生してから生産開始までの期間が平均で13日だったのに対し、BCPや事前対策を実施していなかった企業は、平均で41日かかっています。また、営業停止期間と取引先数減少の割合の相関関係をみると、営業停止期間が長いほど、多くの取引先を失っています。
このことから、事前対策を行っておくことが、災害発生から早期に事業を復旧させるのに重要なことであるといえます。
事業継続力強化計画を策定するためには、まず事業継続力強化を図る目的を検討することが重要です。そして、ハザードマップ等を活用しながら災害等のリスクの確認・認識をし、災害等が発生した直後の初動対応や、ヒト・モノ・カネ・情報への影響を踏まえた事前対策を検討します。事業継続力の強化は計画だけではなく、平時の取組(訓練)が大切ですので、平時の体制についても検討します。
これらの内容に加えて、導入を予定している設備の詳細や、事業継続力強化の実施に必要な資金の使途・調達方法・金額などを記載した事業継続力強化計画を作成し、経済産業大臣に申請をします。計画の審査には、だいたい45日くらいかかるようです。
経済産業大臣の認定を受けると、中小企業防災・減災投資促進税制を適用できるだけではなく、低利融資や信用枠拡大といった金融支援、補助金の加点措置、損害保険料の割引などのメリットを享受することができます。


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